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世紀末の妖美 孔雀と姫

やってまいりました、世紀末の妖美第3弾!
今回は孔雀とお姫様・・そう、ホイッスラーによるピーコック・ルームです。

ピーコック・ルームとは、富豪、フレデリック・R・レイランドの邸宅のダイニングルーム。
1874年、レイランドはロンドンのプリンシズ・ゲートに新しい邸宅を購入し、内部の改装を始めました。
当時、富豪たちが邸宅の内装を画家に依頼するのは流行していたようで、
レイランドもロセッティとモリス商会にこの邸宅の内装を依頼をしました。
ダイニングルームはホイッスラーの「陶磁の国の姫」と染付の陶磁器のコレクションで飾ることが基調とされ、
トーマス・ジキルという建築家に依頼されました。

princess.jpg
陶磁の国の姫

ジキルは半年ほどかけて部屋の改装をほぼ終えましたが、
様々な装飾的伝統を寄せ集めたその内装に周囲の評価もまちまちで彼自身も不調和を感じていたそうです。
そこでレイランドからホイッスラーに、配色についてジキルに助言するよう要請があったのです。

ホイッスラーは、これはチャンスとばかりに部屋を3次元のキャンバスに見なし装飾を始めました。
友人が訪れた時も気が狂ったような状態で仕事に取り組んでいて、天井、腰板、窓のシャッターなどだけでなく、
壁面全体、さらにはレイランドがこの部屋の壁紙の一部にと購入した高価なアンティークレザーにも
色彩を施していたそうです。
それを見た友人がレイランドに相談はしてあるのか聞いたところ、ホイッスラーの答えは
「なぜ相談しなければならないのか。最も美しい部屋をつくっているのだから。」だったとか。

彼は「陶磁の国の姫」が掛けられた壁と向かい合う壁面と、
天井近くから床まで広くとった三面の窓のシャッターに金色の孔雀を描きました。
(レイランドと報酬をめぐって対立するひとつの種となるのですが。。)
peacock.jpg
孔雀というテーマや、技法の面からも、日本美術の強い影響が示唆されています。

そしてこの部屋を見て強い影響を受けたのが、この方のこの作品なんですよ。
from salome 04
オーブリー・ビアズリー「孔雀の裳裾」

このお部屋、1904年にアメリカ人のフリーアに買取られ、
現在はワシントンのスミソニアン研究所フリーア美術館に移築されています。
今もロンドンにあったらなあ・・!
で、今、通常はこの部屋に飾られているたくさんの陶磁器がエキシビジョンの為に移動させられていて、
ホイッスラーによるじゃポニズムな装飾、黄金に輝く孔雀のみになっているそうです。
それはそれで壮観です。。
The Peacock Room Comes to America
↑このページはぜひ見ていただきたいです。
ピーコック・ルームの美しさがよくわかります!!






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世紀末の妖美 その2

19世紀末の妖しい美について、その2がやってきました。
オーブリー・ビアズリーについて気になって気になってしまったからです。

今回は、『アーサー王の死』につけられた挿絵をいくつかご紹介します。

Arthur 02
まずは雅に輝く金色の表紙。

『アーサー王の死』Le Morte d'Arthurは、
中世のイギリスに伝えられたアーサー王にまつわる逸話を15世紀の騎士マロリーがまとめ、
1485年にイギリス最初の印刷業者キャクストンが出版したものです。

Arthur 07
Sir Launcelot and the Witch Hellawes

19世紀、中世への関心が高まります。
arts and crafts運動で有名なウィリアム・モリスはケルムスコット・プレスを設立し、
美しい挿絵などに彩られた中世趣味あふれる豪華な本を次々と刊行しました。

Arthur 05
How Sir Tristram Drank of The Love Drink

出版業者のJ.M.デントは、バーン=ジョーンズが挿絵を描いている
モリスの豪華本に対抗すべく、『アーサー王の死』の出版を計画していました。
なるべく安価で市場にだすため、新しい印刷技術(ライン・ブロック印刷)を使い、
そして、とある本屋の主に紹介された当時無名だったビアズリーに挿絵を頼んだのです。

Arthur 04
How Queen Guenever Made Her a Nun

1894年『アーサー王の死』はビアズリーの豪華な表紙と挿絵で、最終的に二冊本で出版されました。

ラインブロック印刷は、従来の木版などの方法ほど手間と技術をかけずに原画を再現する事が可能です。
ただハーフ・トーンが出せないという欠点がありましたが、
ビアズリーはこの欠点を逆に利用し、白と黒の対比を最大限に活かした作風に成功したようです。
確かに白と黒の強いコントラスト、そしてステンドグラスのような雰囲気が、
妖しい美しさを演出しているような感じを受けます。

Arthur 03
How Queen Guenevere rode on Maying

ビアズリーは『アーサー王』の挿絵と同時期に『名言集』の挿絵もデントに頼まれていました。
それがまた、ビアズリーの言葉を借りると「ちょっとばかし日本的」で、
「正気の沙汰とは思えない、少しばかりいかがわしい」ものばかりなんです。
そしてその後、『サロメ』の挿絵に取りかかります。
『サロメ』の方が『アーサー王』よりも毒っぽさが強かったりグロかったり、
また淫らな感じも増しているのはそのワンクッションがあるからなんですね。

Arthur 06
La Beale Isoud at Joyous Card


ま、なにはともあれ、美しいです。。






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世紀末の妖美

ああ!お前はその口に接吻させてはくれなかったな、ヨカナーン。
さあ、今こそ接吻を。
お前の口をこの歯で噛んでやろう。熟した果物を噛むように。
from salome 06
The climax

サロメです。

1891年に出版されたオスカー・ワイルドの「サロメ」。
オーブリー・ビアズリーにより妖しく美しい挿絵が描かれました。

from salome 02
The Eyes of Herod

世紀末美術。

ビアズリーの作品にぴったりくる言葉だと思います。
ひとつの世紀が終わる。それにより何かが起こる予感がする。
それは人々を不安にさせる何か。。

from salome 05
Stomach Dance

美しい。
けれど、どこか不安を感じさせる美しさ・・

from salome 04
Peacock Skirt

この、孔雀柄のマント!(ドレス?)
模様といい曲線といい、どきどきします。
こんな雰囲気を醸し出せる服、見つけたい!

from salome 03
John and Salome

この蝶の模様もたまらないですね。
これは少し着物のような雰囲気があります。
ちなみにワイルドは「あまりに日本的だ」という理由で
ビアズリーの挿絵があまり気に入らなかったそうです。
わかってないなぁ・・なんて、エラそうな事をつぶやいてみたり。

from salome 01
Dancer's Reward

ああ!ついにお前に口に接吻したぞ、ヨカナーン。接吻したのだ。
お前の唇は苦かったが、血の味だろうか・・?
いや、きっと愛の味なのだ・・。

あの、、グロいのはわかっています。
でも、どこか惹き付けられるような美しさを感じます。
そしてマントの内側がお花柄(薔薇?)なのがなんともかわいいのです。
ポイント高し。

世紀末の妖美。
最近のお気に入りです。
今回はビアズリーによるサロメの挿絵でお伝えしてみました。
次回があるのかはわかりませんが・・


ちなみに「サロメ」からの引用部分は
アルフレッド・ダグラス卿の英訳版を勝手に翻訳させていただきました。

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プロフィール

Tomoko

Author:Tomoko
Lucy and Matilda
バイヤー兼デザイナー。

古いものが大好き。
アンティーク、ヴィンテージ
について日々勉強中です。。

オフィシャルHPにて
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ご覧頂けます。
ぜひ遊びにいらしてください!

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